PHILOSOPHY

想いはつながる───

たった1枚の看板が紡いだZARAMEの物語

ZARAMEの好きなところを尋ねたとき、その「世界観」を挙げる人は多い。

1930~40年代のアーリーアメリカンを感じる店内装飾や看板、メニュー。
洗練されすぎていない、古き良き時代のアメリカに、どこか憧憬の念を覚えるのかもしれません。

そんなZARAMEのルーツがどこにあるのか。
これまであまり語られることのなかったその誕生秘話を、ご紹介します。

きっかけは、たった1枚の写真でした。

運命的な出逢いとはドラマチックなものではなく、日常のすぐそばにあるものなのかもしれません。
創業者の高田がZARAMEを始めようとしたきっかけも、まさにそんな感じでした。

今から約15年前。東京で飲食店に勤務していた高田は、地元で店を始めるために25歳のときに岡崎へ帰ってきました。「店をやる」といってもまだ何のイメージもない頃。
ヒントを求めて東京の街を歩いていたときの話です。

何気なく入った店で手にしたあるアパレルブランドのZINE(フリーマガジン)。
ページをめくっていたときに思わず手を止めたのが、この写真でした。

「DONUTS」と書かれた看板を前に、アメ車に腰かけて休む男。
ドーナツの「甘さ」と男の「気だるさ」の対比が妙にカッコよく、
高田は直感したと言います。ZARAME誕生の瞬間です。

ZARAMEの看板を手がける
NUTS ART WORKSとの出逢い

開業準備を進めるなかで高田は、縁あって東京を拠点に活動する看板屋
「NUTS ART WORKS(以降NUTS)」さんと出逢います。

実は今、ZARAMEの看板や店内装飾を手がけてくれているのは彼。
高田と共に世界観を具現化してくれる、ZARAMEに欠かせない人物の一人です。

開業当時から親睦を深め、プライベートでも交流のあるNUTSさんと高田。

何度か手土産にZARAMEのドーナツを持参したところ、あるときNUTSさんから相談がありました。
「ドーナツやハンバーガー、アメリカンカルチャーが好きな友達がZARAMEのドーナツを食べたがっている。
今度来るとき、そいつの分も持って来てくれないかな?
高田は大変ありがたいとは思いつつ、ZARAMEのドーナツはすべて手づくりで日持ちしないことから、
やむなくお断りをしていました。

突然、明らかになったあの写真の真実

またあるとき、いつものようにNUTSさんのアトリエで話していると、なぜかZARAMEドーナツ誕生のきっかけに話がおよびました。25歳のときにたまたま手にとったZINEの写真に目を奪われたこと。
そこに映っていた「DONUTS」の看板にインスパイアされたことを、高田はそこで初めてNUTSさんに語りました。

するとNUTSさんが一言。

「…その看板描いたの、オレだよ」

高田が驚いたことは言うまでもありません。しかし、驚くべきはそれだけではなかったのです。

「あと、そこに映ってるのが、ずっとドーナツを食べたがっていた彼」

運命とはまさにこのこと。NUTSさんいわく、彼の名前は西山徹(にしやまてつ)さん。若者に人気のブランド「WTAPS」のデザイナーを務めていて、そのブランドの世界観を伝えるために、高田が手にしたあのZINEを手がけているとのことでした(現在は廃刊)。
高田は興奮冷めやらぬなか、彼にドーナツを食べてもらうことを固く誓い、その場を後にしたそうです。

思いがけない恩人からの電話

その後、間もなくして、高田のもとに知らない番号から電話がかかってきました。出てみるとなんとあの西山さん。「持つべき人に持つべきものを渡したい」。
その申し出に誘われるまま、後日、原宿にある彼のアトリエにお邪魔しました。
もちろん、とっておきのドーナツを持って。

西山さんはZARAME開業のきっかけとなった、いわば恩人。
持参したドーナツをとても喜んでくれ、一緒に食べながら、ZINEを手にとったときのこと、
その写真に目を奪われたこと、そしてNUTSさんとの仕事のことなどを夢中で語り合いました。

あっという間に時間が過ぎ、帰りがけに「これは、あなたが持つべきものだから」と西山さんが手渡してくれたのが、あのZINEに写っていた「DONUTS」の看板。自分が開業を決めたあの写真に写っていた看板が、今まさに自分の手のなかにある。「偶然」なんて言葉では説明がつかない状況にまた運命を感じ、なにか大きな存在に感謝したと言います。その後も、西山さんと高田は親睦を深めつづけています。

ZARAMEから新しいつながりが
生まれますように

あのとき、看板と一緒にいただいた西山さんからの手紙は今、高田のデスクのすぐ横にこうして飾られています。

一連の出来事を通じて学んだのは、「想いを込めてつくったものはジャンルを超えて広がっていく」ということ。
これが、ZARAMEにおけるモノづくりのポリシーにもなっています。
1冊のZINE、1枚の写真、1枚の看板に引き寄せられた高田だからこそ、確信をもってこれを語ることができるのです。

これが、ZARAME誕生のルーツ。え?いただいた看板はどうしたのか?当然、気になりますよね。

25歳の高田がZINEで目にし、ZARAMEの世界観を決定づけたあの看板。
そして、巡り巡って高田のもとにやってきたあの看板。

実は、あなたが普段、何気なく通ってくれている岡崎の店舗のここにあるのが、あの看板なのです。

1枚の写真をきっかけに、高田がNUTSさんと西山さんと出逢ったように、
この看板のあるZARAMEをきっかけにあなたにも、素敵な出逢いが訪れるかもしれません。